賞与引当金に関して間違えやすい会計処理を解説していきます。
【期末賞与引当金】新人社員は入れちゃダメ?!
期末の賞与引当金の計算上、新入社員を含んでいると引当金が過大に計上されることがあります。
こちらについて会計基準に照らして理由をご説明します。
企業会計上、引当金は以下の4要件を満たした場合、計上することが定められています。
企業会計原則注解18より
- 将来の特定の費用又は損失であること
- その費用又は損失が当期以前の事象に起因して発生するものであること
- 発生の可能性が高いこと
- その金額を合理的に見積ることができること
この点、期末時点では会社は新入社員(期末日以降入社)から労働サービスを受けておらず、その対価として社員に対して賞与を払う根拠はないといえます。
そのため上記②の要件を満たさず、新入社員の賞与は期末における引当金の計上対象とはなりません。
費用は収益を稼ぐためのものと考えると、期末時点で企業の活動に貢献していない新入社員の将来の賞与見込額を費用(賞与引当金繰入)計上するのは変だなと思っていただければ分かりやすいかと思います。
【事例解説】間違いの具体例
では、どのような場面で賞与引当金が間違って計算されやすいのか、イメージしやすいよう具体例を説明をしていきます。
(前提)
- 3月決算の会社
- 夏季賞与 6月支給
- 夏季賞与支給対象期間 12月~5月
- 賞与支給額は基本給の 2ヶ月分(支給倍率は2ヶ月)
- 会社負担の社会保険料率 10%
- 賞与支給対象期間内に勤務した日数に応じて賞与を支給する。
- 冬季賞与は期末の賞与引当金の計算には関係ないので省略
①個人の賞与見込み額の計算
例えば、基本給が30万円の新入社員A(4月~5月勤務)の賞与は下記の通りとなります。
基本給(30万円)×支給倍率(2ヶ月)×勤務日数(2ヶ月)/賞与支給期間(6ヶ月)×社会保険料加算(100+10%)→22万円
②期末まで部分の計算
賞与支給期間の内、期末までの期間の部分を引当金としますが、簡便的に個々人の賞与見込み額を合算後、賞与見込額×4ヶ月(12~3月)/6ヶ月(12~5月)とすることがあります。
そのため①で新人Aを入れてしまうと、下記金額が過大に賞与引当金が計上されることになります。
22万円×4/6=14万円
最後に
賞与引当金を過大に計上することは、営業利益が過小に評価されるばかりか、法人税法上、損金への算入も認められないから、経営上良いことは何もありません。
引当金の要件に留意し計算することで、適切な経営成績の表現に役立てていただければ幸いです。